Past

高原颯時
「Reheat」

2020.06.27 (Sat) - 2020.07.19 (Sun)

デザインスタジオ《well》にて洋服づくりに従事する傍ら、ドローイングをはじめとした作品を制作・発表している高原颯時が、STUDIO STAFF ONLYにて初の個展を開催いたします。


2020年6月27日〜7月19日(土、日のみ営業)
13:00〜19:00


まるで後世から手を伸ばして描かれた

切手や本の栞、グリーティングカード、包装紙、チラシ、マッチ箱など、役割を終えると捨てられるような類の印刷物のことを「エフェメラ―ephemera」と呼ぶそう。由来はギリシャ語にあり、「短い命」を意味する。限定的な価値・機能しか持たない端物印刷である一方、蒐集家が多いことでも知られている。刹那的であるがゆえに、「エフェメラ」はプライベートな思い出・記憶を刺激するような、そんな魅力を持っているのではないか。

高原の描く作品は、かくも儚げでエフェメラのような雰囲気を携えている。モチーフになっているのは、自宅のライトスタンドやカーテン、古物屋で手に入れたファウンドフォト、電子レンジで温められているコーヒーなど、個人的な視点から切り取られたものばかり。角の丸くなった画用紙や、シワの入った薄い用紙に描かれた作品たちは、蚤の市で手に取ったいつの時代かのマッチ箱のような、そんな手触りがある。

例えば、記憶を貯めておくプールにたまたま入り込んだ、人に語る価値を見つけられない記憶というのがある。ごく限られた人としか共有し得ない「エフェメラ」的な記憶は、思わぬものがフックとなり度々思い起こされる。引っ越しの度に出てくる古いフライヤーのように、捨てられず、いつまでもプールの底に漂って、稀に顔をだす、そうして繰り返し意識下へと出入りするうちに、記憶のディテールは丸みを帯び、ぼんやりしてくる。高原が描く、くぐもったタッチでおぼろげに結ばれるイメージたちは、それに近い。確かに目の前にあるモチーフにもかかわらず、彼は風化した記憶の、その先の様子を描いているよう。まるで後世から手を伸ばして。

浅見旬(well、編集者)


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